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映画の登場するプロップガン〜89式5.56mm小銃が
登場するフィルムはやはり自衛隊もの

Type 89

映画の登場するプロップガン〜89式5.56mm小銃が登場するフィルムはやはり自衛隊もの

日本の主力自動小銃が登場する映画でリアルなものといったら89式が登場するものしかない。

64式が登場するものはいくつかあったけど、どれも明らかに実物よりでかい不思議なデコイばかりだったし、自衛隊がAR-18持ってたり昔の映画だとM1カービン持ってたり(M1カービンは実際に自衛隊員に配備されていた時代もあったが日本で調達できるモデルガンがこれしかなかったからという事情も透けて見えた)日本の映画の銃器に関する考証は本っ当にいい加減…と昔から思っていた。

日本の銃器…というより自衛隊の描き方で初めて「リアルだな」と思った映画が大映のリメイクガメラだった。

怪獣映画に出てくる自衛隊って大体怪獣が出てきたら最初に61式戦車とか航空自衛隊のF104とかが出てきて、数秒で全滅するという役回りばっかりだった。

「自衛隊って弱いやん」
子供心に思っていたが、初めて
「自衛隊かっこいいやん」
と思ったのがこの映画だった。





89式5.56mm小銃のガスブローバック
今でこそリアルな89式は出回っているが初期の頃はこの銃も
ディテールがわからなかったから映画の人たちは苦労したろうと思う



「ガメラ2 レギオン襲来」4Kデジタル復元版

昭和時代にゴジラと並んで子供達に人気があった怪獣映画の「ガメラ」を平成時代に入って金子修介がリメイクした映画。

昭和時代のガメラは、だんだんコミカルになっていくゴジラのアンチテーゼとして「ややシリアス路線」でスタートしたが、昭和の子供だった金子修介にもやはり「あまりにも子供だまし」と映ったそうだ。

そこで「リアル志向」を徹底してどちらかというと昭和怪獣時代に子供だった大人向けに
「本当はこういうリアルな怪獣映画を観たかったでしょ?」
という意図でリメイクしたのがこの平成ガメラシリーズ。

この2作目の「ガメラ2」は防衛庁が全面協力した映画だったので、自衛隊側の協力の仕方も気合が入っていた。


流星雨の一部が北海道の恵庭岳に落下。

これを自衛隊員が調査するが、落下跡があるだけで隕石の本体が見つからなかった。

ところがこの隕石落下をきっかけに地下鉄内の乗客殺傷事件、NTTの光回線消失、ビール工場で大量の「ビール瓶紛失」など奇怪な事件が次々起こる。

NTT職員と少年科学館学芸員、陸自二佐らが協力して調査するうちに、突然札幌市街の中心地に「巨大な花が咲く」という事件が起きる…というような筋立て。





札幌市内の巨大な花は人の背丈ほどの「虫たち」によって守られている
これに対応するために自衛隊が出動した




陸自隊員が構える89式小銃はエンドロールでキャロットが
クレジットされているのでキャロット製の電動ガンかラバーガンと思われる
そのためだろうが発砲シーンはない




同アングルの89式ガスガン


この花を咲かせた「草体」を爆破する自衛隊、一時的に活動を止めることができたがやがてこの「草体」の狙いが宇宙に種子を打ち上げることだったと判明する。

もし「打ち上げ」が始まったら札幌市が消滅するぐらいの爆発力だということが判明、その時に三陸沖にも落下した流星雨隕石が浮上してきてガメラが出現…という流れ。


怪獣映画に登場する自衛隊って、怪獣出現後1分ほどで攻撃開始、しかしかすり傷も負わせることもないまま怪獣の反撃を食らって数秒で全滅するというパターンばかりだった。

テレビの特撮もので毎週瞬殺される自衛隊を観続けてきた世代には、自衛隊はいきなりぶっ放すという刷り込みがある。

ところが平成ガメラではちゃんと自衛隊の「防衛出動要件」について触れていた。
「防衛出動要件」に触れたのはおそらくこれが最初の日本映画だった。

自衛隊は
「日本国が急迫不正の侵害にさらされていること、他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使に止めること、この3点を充たす場合においてのみ憲法9条下の防衛出動が認められる」
という説明がちゃんとされ、防衛出動命令が出るまでは自衛隊は自律的には動けないという縛りがちゃんと描かれていた。

左巻きのプロパガンダでは、実銃と実弾を持った数十万人の集団が国内にいるので治安出動の危険は常にある…という話だったが、実際には自衛隊ってがんじがらめに縛られていて
「これじゃぁ、本当に北朝鮮や中国が攻めてきた時に対応が間に合わないんじゃないの?」
という逆の心配が感じられるような現実が初めて描かれた。


そして「ガメラ2 レギオン襲来」ではすぐにやられる自衛隊じゃなく、レギオンに甚大なダメージを与える自衛隊が描かれる。

怪獣が出てきたら市街地だろうがどこだろうが御構い無しに戦車もジェット戦闘機も密集させてやたらぶっ放すのではなく、
「我々の火力は無限ではない」
という理由で射撃対象を絞り込み、防衛線を設定してそこに戦力を集中する自衛隊の戦い方がリアルに描かれる。





栃木防衛線に戦力を集中するために移動する陸自74式戦車
これは特撮ではなく本物の自衛隊の戦車で市街地を走っているように見えるが
実際には駐屯地の中に電柱を立てファミレスや養鶏場のセットを建てて
野戦演習場を市街地のように見せている




足利のNTTマイクロ波通信設備でガメラでさえ苦戦した小型レギオンをおびき寄せ殲滅した自衛隊
企図を妨害しようとした1匹のレギオンを渡良二佐(永島敏行)が9ミリ拳銃で撃破する
この映画では防衛庁の全面協力を得たせいか自衛隊の描かれ方も一味違う
ガメラ単独ではとても勝ち目がなかった強大な敵も自衛隊と力を合わせれば撃退できる…
という新しい描かれ方をしている


札幌のNTT管制室で
「ISDN通信システムダウン!」「移動体通信基地局反応しません!」
とか所員が叫んでいたり、当時はわからなかったけど今観たら古臭いな…とか思ったり。(当時のNTTはISDNが最新通信設備だったんだ…とか)

雪が積もった札幌の郊外を水野美紀が超ミニスカートで歩き回っていたり。(当時は何も思わなかったけどあれは北海道民から見たら『冬の北海道であのスタイルはありえん』という突っ込みどころじゃないか)

インターネットで見つけた「ガメラと通信する少女」の記事を主人公のお父さんが読んでいたら、操作を間違えてブラウザの表示がくしゃくしゃと紙ゴミのように丸まっていくとか。(公開時の1996年当時、そんな粋なグラフィック持ったブラウザなんてあったか?)

まあ今観るといろいろ細かいところがツッコミどころだったり、時代だなぁという古臭さがあったはする。

だが仙台市内から脱出する自衛隊の車列がガメラとすれ違う時に、永島敏行がガメラを見上げてその行方を見守るシーンなどでそれ以前の怪獣映画にはありえなかった人の目線の高さで撮影した画角が初めて登場して、映像的には今日の「シン・ゴジラ」に通じるような画期的なリアリズムだった。




ミッドナイトイーグル

「ガメラ2」には89式の発砲シーンはなかったが、この「ミッドナイトイーグル」には逆に89式の発砲シーンがふんだんにある。


富山方面で国籍不明機に対して航空自衛隊がスクランブルをかけたが、この不明機が突然消えるという小さな事件が事の発端。

このスクープを追っていた新聞記者(玉木宏)はこれは米軍の新型ステルス爆撃機(コード名:ミッドナイトイーグル)で北アルプスに墜落した事、さらに新型の核兵器を搭載していたことを突き止める。

記者は、北アルプスに元戦場カメラマン(大沢たかお)と向かう。

さらにこの行方不明になった新型核兵器を奪取するために破壊工作活動をする国内の工作員(某国と言っているが登場人物の背景から北朝鮮であることは一目瞭然)の活動をつかんだ週刊誌女性記者(竹内結子)、北アルプスにいる元夫の戦場カメラマンからヒントを得てそれぞれにこの真実にたどり着く。


自衛隊の松本山岳レンジャーも現地に向かうが某北潜入部隊の待ち伏せにあって全滅、先行した習志野空挺団の一人生き残った隊員(吉田栄作)とカメラマン、記者はミッドナイトイーグル墜落現場に到着。

この新型核兵器がもし起爆させられたら関東甲信越の100万もの市民が犠牲になること、そして東アジアの政情不安を招くためにまさにこの某北国の特殊工作員たちがこの新型核兵器を北アルプスで起爆しようとしていることが明かされる。

応援のために送られた空挺団降下部隊は悪天候のために降下できず、レンジャー一人と銃撃戦は素人のカメラマン、新聞記者の計3人で30人以上の北某国特殊部隊を食い止めることになった。

ここで一つの重大な決断をする…というようなお話。

仕事も私生活も充実していた絶頂期に突然急逝した竹内結子が女性記者を熱演。





核兵器を搭載したコード名ミッドナイトイーグルと呼ばれる爆撃機を確保するために
派遣された習志野空挺団レンジャーは雪中行軍中に突然何者かに狙撃される
習志野空挺団だって特殊部隊だが謎の某国特殊部隊の襲撃に一隊はあっという間に全滅する
全員冬季迷彩服に89式にも白ビニールの迷彩カバーをかけて完全武装している




一人残ったレンジャー生き残り(吉田栄作)と記者(玉木宏)カメラマン(大沢たかお)
の3人はミッドナイトイーグルに到達するがそこで30人以上の工作員に包囲される




玉木宏が構える89式にはJGVS-V8暗視ゴーグルが装着されている
夜戦用の可視光線増幅型ゴーグル




こちらはECOG+RMRが装着された東京マルイの89式
夜戦用のスコープではないしまあ見た目も違うが…




これが自衛隊で採用されているJGVS-V8暗視装置実物(via Wikipedia)




JGVS-V8は暗視エンハンサーだが照準器ではないので89式に装着する時には
赤外線レーザーポインターとセットで使う装備だがこの映画ではなぜか単独で装着されている


ラストシーンで吉田栄作の射撃シーンがスロー撮影で流れるが、よく見たら排莢しているのにボルトレバーが動いていない。

エンドロールに東京マルイがクレジットされているので、おそらくマルイの電動ガンの中身をくりぬいてM16か何かのモデルガンのメカを埋め込んで発砲シーン用プロップに改造したと思われる。


この映画は安保条約の協定により表向き核武装をしていないことになっている在日米軍が実際には核を持っているという公然の秘密を踏まえて、もしもそういうものがテロリストに奪われたらどうなるのか、正規軍の侵攻のような昼間の戦争ではなく潜入工作員の破壊活動というような形で戦争が始まったら日本の防衛力は対応できるのか…とか多くの問題提起が含まれている。

元戦場カメラマン(大沢たかお)は世界中の戦場で子供達が無残に殺されるのを目の当たりにして、いくらシャッターを切っても子供一人救うこともできないという現実に失望し戦場を撮影するのをやめてしまい、彼の山岳部時代の後輩の新聞記者(玉木宏)はマスコミ人の通例で自衛隊に反発を感じており自衛隊や政府は常に真実を国民から隠すと隊員を詰る。

元戦場カメラマンは
「子供を殺すのはいつも軍隊だ。世界中で軍隊が子供を殺すのを見てきた」
と呟くがレンジャー(吉田栄作)は
「我々は平和を守るために戦っている。それに俺たちは軍隊じゃない。自衛隊だ。」
と短く返す。


なんだかいろんな問題を含んだ映画だったけども、テルミット弾を積んだトマホーク1発で全ての問題を昇華してしまった。

現地からの通信が途切れる描写とその瞬間の竹内結子の演技が秀逸。







2022年1月9日
















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