Colt 1861 Navy カスター将軍の銃〜気になっていた錆びて痛んだメッキを補修…めっき工房の使い勝手についても
2年ほど前に何度か集中的に取り上げたフランクリンミントの「カスター将軍の銃」ことColt M1861 Navyのメッキが、入手した当時からかなり傷んでいてその修復ができないか計画していた。
自宅で手軽に(というほど手軽でもないが)金属メッキができるという触れ込みの「めっき工房」の基本セットを入手したので念願のカスター拳銃のリペアをやってみた。
めっき工房は金属磨き、脱脂剤、金・ニッケル・銅のメッキ液、電気メッキ用のペンというセット内容。
これで傷んだメッキが本当に修復できるのか、前から知りたかったが結論から言えばこれはかなり使える。
ただしいくつか注意点はある…という感じ。
まず第1点はメッキできる対象。
ABSには当然メッキできない。
金属は通電するものならメッキ可能だが、取説にも記述があるように亜鉛合金はメッキが乗らない。
なので亜鉛パーツを削った面はメッキできない。
メッキパーツはメッキできるが、そこで第2点。
メッキ表面に酸化皮膜が残っているとメッキが乗らない。
なので付属の金属磨きでの研磨は必須…なのだがあまり執拗に磨くと下地のメッキが剥げてしまいメッキがかけられなくなる。
第3点は下地仕上げ。
あまり磨くと下地メッキが剥げてしまうが、かといってこういう中古のコンディションが悪いテッポはメッキが大抵傷んでいるので執拗に磨かないと綺麗にならない。
ブルーイングと一緒で下地の仕上げで完全に光沢を出さないとメッキを乗せてもあまり綺麗にならない。
ほぼ下地仕上げの研磨で仕上がりが決まると言っていい。
第4点は脱脂。
金属磨きはベンゼン系のオイルに研磨剤を混ぜているので、研磨した状態はほぼべったり脂が表面についている。
指紋や手の平の油も色むらの原因になるそうだから脱脂はしっかりやらないといけない。
第5点は予備電池を用意すること。
セットにはサービスの6P9Vの電池が付属するが、これ一個だけでは脱脂だけでほぼ1本使い切ってしまう。
銃を1挺仕上げるには9Vの電池が3〜4本は必要なので、予備電池は多めに用意すること。
注意点としてはこんなところかな。
以外に簡単に綺麗に仕上がるのだが、色によっては難しいかも。以下詳細。
今回入手した「めっき工房」の基本セット
自宅で手軽に(!)金属メッキができるという謳い文句が前から気になっていた
メッキ液はかなりな強酸性の溶剤のようなのでメッキをかけた後はしっかり流水で洗わないといけない
液が残っていると金属パーツがあっという間に錆びそうなのでしっかり洗浄できるように完全分解した
リコイルシールドやバレル、レシーバーの金属インサートも全部抜く文字通りの完全分解
付属の金属磨きでメッキ表面を磨いたところウエスが真っ黒になる
2年前に綺麗に研磨したがやはり2年でこんなに表面は酸化するということだ
メッキの寿命は永遠ではない…ときどき手入れしないとすぐに真っ白になってしまう
上で書き漏れた注意点をいくつか…
ペン先のフエルトは予備がいくつかセットに入っているがケチらないでこまめに交換すること
メッキをかけているとだんだん煤のような黒い汚れが溜まってくるがこれが増えるとメッキ剤の反応が悪くなる
黒くなったらすぐ交換…なので予備のフエルトも多めに用意した方がいいかもしれない
取説に液がペンの中にしみこむと電極が錆びるのでペン先を上に向けないことと書いてある
注意していてもやはり液は中に入り込んで電極は錆び始めるのでここもこまめに研磨する必要がある
錆びているのを放置するとあっという間に故障すると思われる
一通りメッキパーツを仕上げ直した
作業後組み立てたネービーの仕上げ
何が変わったかというとフレームのニッケルメッキはかなり剥がれて下地の銅メッキが見えていたが
これが完全に銀色に復活して色合いもくすんだグレーっぽい色だったのがピカピカになった
ニッケルメッキはかなりノリが良くキレイに仕上がるが金メッキは思ったよりも色が薄く
確かに金色には見えるが下地の銀色が勝っている印象
バレル・フレーム・グリップフレームはニッケルメッキ、ローディングレバー・シリンダー・ハンマーは金メッキをかけた
2年前に錆付いていた表面を磨いた時に金メッキはほぼ完全に剥がれてしまい全体に
銀色のテッポになっていたが今回の仕上げでシリンダー・ハンマーなどは確かに金色にはなった
しかしこうしてみるとニッケルに比べて金色の色のノリが薄い
これは昔の写真風に加工してやっとイメージの色に近づけているが実際はもっと淡い
ペン先のフエルトを当てるとメッキ液が電気と反応してブクブク泡を立てるので反応しているかどうかは見ればわかる
ニッケルは煙を吹くほど反応するが塩素ガスを出すようなので換気をよくすること
金は煙は吹かないし反応には時間がかかるようなので「塗る」というよりは液を「置く」というイメージ
まあ金色に見えないこともないし淡いホワイトゴールドの方が上品とも言えるが
(マルシンオリジナルの金色はちょっとエグい)いいともいえるがもう少し濃い色にしたい
なのでAmazonで24Kメッキ液(厚付)11,000円也を購入してしまった
これで色がどう変わるかはまた次回比較写真を上げます
アップにしてみた
ハンマーシャフトスクリュー周りがネジもサイドプレートも銅色に
なっていたのが気になっていたのでピカピカの銀色になったのは嬉しい
リボルバーの大好物アングルのバックショット
エングレービングモデルだとメッキのくすみはてき面なのでまたキレイになってよかった
こちらはColtネービーの実銃
やけに金色が強いがこれはおそらく再メッキ、リフィニッシュされている
ローディングレバー、シリンダー、ハンマーが金メッキされたカスター銃と同じアレンジ
グリップがオリジナルではなく古式銃っぽいカスタムグリップに交換されているのが珍しい
こちらはローディングのセットと化粧箱に入れられた実銃の61Navy
(上)Colt 1861Navy実銃と(下)フランクリンミント・マルシンのカスター将軍の銃
上の実銃は銃本体はニッケルメッキでグリップの金色はおそらくメッキではなく真鍮製のパーツだと思われる
こういうアレンジの実銃も結構見かける
グリップはアイボリー(象牙)をモデル化したフランクリンミントに対して
この個体はスタグホーン(水牛の角)を使用しているようだ
上記実銃の右側
これはかなりコンディションがいいが映画「ウォール街」のワンシーンで
ゲッコー(マイケルダグラス)が銃のコレクションを見せびらかすシーンで
ガラスケースにエングレービングモデル、ニッケル仕上げの61ネービーがちょっと映っている
このタイプの銃は結構コレクターがいるようだ
この銃には「ジャクソン・パーカー中尉の正義への貢献に捧ぐ。バーモント第7師団B中隊一同より」
という刻印が見えていてこの銃が記念品として贈られたものであることがわかる
以前フランクリンミントの銃が本当にカスター将軍の銃なのかちょっと考察したが
このようにエングレ入りメッキ仕上げ銃は実際の戦闘に使ったわけではなく
記念品として贈り物にされたものだということがこの刻印からもうかがわれる
(上)Colt 1861Navy実銃と(下)フランクリンミント・マルシンのカスター将軍の銃
これは上の「パーカー中尉の銃」とはまた別の個体でやはり全体がニッケル仕上げ
グリップのみ真鍮仕上げというアレンジの61Navy
(上)Colt 1861Navy実銃と(下)フランクリンミント・マルシンのカスター将軍の銃
この個体はパーカー中尉の銃よりもかなりメッキ剥がれ・錆が浮いてきていてコレクターコンディションより傷んでいる
フランクリンミントのカスター銃はグリップパネルはアイボリーをモデル化しているが
この個体のグリップパネルは水牛の角の削り出しのようだ
これもかなりヒビが入って傷んでいる
シリアルNo.の25705はカスター将軍の銃よりもかなり後の製造番号
12000ほど後なので生産数の少ない61Navyから考えると
2〜3年後の製造というところか
エングレービングの雰囲気はかなりカスター将軍の銃に似ているので同じ職人の加工かもしれない
どうでもいいことだがバレルキーが上下逆さまに刺さっているのがちょっと気になった
この挿し方だと壊れてしまう気がする…
シリンダー周りのエングレービング
こちらはフランクリンミントのカスター銃のエングレービング
グリップパネルの左側にはフランクリンミントとはデザインが違うがやはりワシ(Eagle)のレリーフ
こういう細工はこの当時割と一般的だったのかもしれない
こういうのもデュエルピストルというのかよく知らないが61Navyの実銃2挺セット
1挺はオールニッケル仕上げでもう1挺はシリンダー・ハンマーがゴールドに見えるが
これもコンディションがあまり良くないので本当はどっちも金メッキがかかっていたのかもしれない
とりあえず復活した61Navy
「めっき工房」は概ね満足のいく仕上がりになったのだがやはり金色が弱い気がするので
金の含有量が5倍の厚付金メッキ液を購入したのでその結果もまた報告する
金メッキ液ひとつで「めっき工房」セットよりも高いというすごい値段だが
本物の24Kが入っているようなので仕方がないかもしれないが…
2022年3月22日
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