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マルシンのゲーリングルガーのロッキングブロックのスプリングを製作
〜実銃にはスプリングがないと書いたが実はあった

Luger take-down spring

マルシンのゲーリングルガーのロッキングブロックのスプリングを製作〜実銃にはスプリングがないと書いたが実はあった

剥げかけていた金メッキを修復したゲーリング・ルガーP08の動作確認中にホールドオープンからトグルを戻すと、トリガーレバーカバーが吹っ飛んでバレルエクステンションが前に脱落するという事故が起きたことを前に書いた。

原因は前のオーナーがロッキングブロックのスプリングとプランジャーベアリングを
「こんなもんいらん」
と思ったのかどうかこれらの部品が捨てられて脱落していたからだった。


問題は実銃の部品はどうなっているかということだった。

マルシンや昔の金属MGCはコイルスプリングとベアリングでロッキングブロックにクリック感を出して固定するという方式だった。

MGCのブローバックのルガーはそもそもロッキングブロックレバー自体がダミーでねじ止めされて動かなかった。

しかしコイルスプリングとベアリングというのはいかにも日本のモデルガンメーカーがやりそうな部品構成で、実銃でこんなパーツ使っているのは見たことがない。

実銃の部品表見てもロッキングブロックの固定用スプリングが描かれていないのでメカがどうなっているかわからなかった。

ところが真鍮削り出しのモデルガンを製作しているプロジェクトZEKEさんがこのルガーのロッキングブロックスプリングについて興味深い記事を書いておられた。

ヒゲバネ・Products ZEKE 切削ブログ



事の始まりは前回の記事で書いたバレルエクステンションの脱落
ロッキングブロックレバーが下に下がっているの気がつかずに
オープンしたトグルを戻すとトリガーレバーカバーが吹っ飛んで脱落が起きる
実銃だと当然重大事故だしモデルガンだと事故ではないが気分の悪さはマックス




原因も前にも書いたが丸で囲んだロッキングブロックスプリングとプランジャーベアリングが
脱落していたからでこれの目的がわからなかった前のオーナーが捨ててしまったらしい




問題は実銃の部品構成がどうなっているかがわからなかったこと
実銃の部品表はユニットは書かない決まりらしくスプリングが書いていない
どんな仕組みでロッキングブロックが勝手に下がらないようにしているのかわからなかった




上記プロジェクトZEKEさんのブログに真鍮削り出しモデルガンの製作記事があって
このロッキングブロックの下と横に見えているのがスプリングだという記述があった




このスプリングの形状を海外のオークションサイトなどで検索すると沢山写真が出てきた
大別するとこの2種類の形状がありどちらもこのスプリング自体のテンションで
ロッキングブロックの溝を押さえつけるひげばねになっていてまるで懐中時計のメカのよう
19世紀のプロイセンの工業技術の雰囲気がこの繊細なバネから感じられる
これを自作することにした…のだがこれが想像以上に大変だった




実銃のロッキングブロックとスプリングの形状
このロッキングブロックに彫られた溝にヒゲバネがはまって
テイクダウンレバーが勝手に下がらないようにテンションをかける
リサーチして部品の形状は概ねわかったので実践に入る




ロッキングブロックが勝手に下がらなければ十分なのでそんなに強いテンションは要らないが
かといってすぐにへたるバネでも困るのでコクサイのガスリボルバーの部品として
取り寄せた余ったバネを切って曲げて似た形状に加工することにした
写真から判断するに実銃のヒゲバネは1.5mm径というところだが1.1mmほどのバネを使った




バネを通す穴をリューターでレシーバーに開けた
この径のバネを使った理由はこのバネ溝がそれぐらいの幅だったため
実銃と同じ1.5mm径を使うとこの溝を広げないといけなくなり工作が大掛かりになってしまうため




外側から見たらこんな感じ
メッキモデルのレシーバーに穴を開けるのでなかなかドキドキの作業




ロッキングブロックにヒゲバネがハマる溝を彫った
中央にベアルングの受け穴があるがこれに合わせると深すぎる感じ




だいたい形に溝を彫ったら砥石ビットで形を滑らかにする
この溝の形状でレバーの硬さが決まる




大まかな形状に作ったバネをレシーバーにはめてロッキングブロックを差し込み固さを見る
このスプリングが硬すぎるとレバーが動かなくなってしかも抜けなくなってしまうので
ゆるゆるの状態から少しずつバネを曲げてテンションを強く調整した
簡単に書いているがテストは数十回に及んだ




このバネの中央の部分がロッキングブロックの溝に
はまってロッキングブロックを固定するという仕組み
実銃もこのスプリングの製作と調整にはかなり手間がかかると思われる
しかも一挺ごとにテンションが違うはずだから部品の互換性はない
いかにも19世紀的なメカだと思う




概ね狙い通りになってきたのでロッキングブロックを磨いて抵抗を少なくする
ヒゲバネも長めに切り取っているのでレシーバーに合うように両端を切り詰めて磨く




こうしてできあがったロッキングブロックスプリングを組み込んだ様子




そしてレシーバーの下にもロッキングブロックスプリングの頭が見えている
切ったスプリングの断面はザラザラだったのでこれを磨いた
これが結構しんどかったです…




こうして激しくホールドオープン、ボルトリリースをしても
勝手にロッキングブロックレバーが下がったりしなくなった




完成したルガーP08……ってこのアングルから見たら何が変わったのか全くわからない




このアングルならわかる…のだがこのメカを知っている人が目を凝らして見ないと気がつかない
細かすぎてわからないカスタマイズ…というところかな…




ほぼ自己満足なのだがメカが実銃と同じになったという満足感…です




スプリングがはまっている様子




ところでタナカワークスのガスガンはどうなっているんだろうと
気になって見たらかなり線径が細いが同じ形状のバネが見えている
レシーバー下のスプリング頭の位置がかなり真ん中寄りで実銃と違うが
概ね同じスタイルのメカでロッキングブロックを抑えているようだ
さすがだね…タナカさん




ということで完成形の写真




スプリングが見える側の全景
実は結構めんどくさかったのに外観に
ほとんど影響がない細かいカスタムだった


2022年4月19日
















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