VFCのFNC〜昔から気になっていたFNの不遇の自動小銃の構造をかなり忠実に再現してくれているガスブローバック
先日某NHKのドキュメンタリー番組がカラシニコフを取り上げていて「歴史上最も多くの人を殺した銃」みたいな左翼反戦史観みちみちの内容になっていて、SNS上のミリオタから総スカンを食らっていた。
最も多くの人を殺した銃ならFNBROWNINGのM1910で一発で1000万人を殺した殺傷能力の高さはカラシニコフなんか足元にも及ばない…とかジョークを言っていたわけだが、そのFNの謎の小口径ライフルがこれ。
1970年代から80年代にかけて世界の紛争地のニュースフィルムに登場する自動小銃は、アメリカのM-16、ドイツのG3、ソ連のAKM、そしてベルギーのFN/FALとだいたい相場が決まっていた。
この中でもAKMとFALの遭遇率は頭一つ抜けていて、アフリカや南米、中東の紛争地域のシェアはこの2挺がかなり占めていたと思う。
いずれも頑丈で故障知らずということで劣悪な環境の紛争地域に合ったのかもしれない。
例のドキュメンタリー番組ではアメリカのM-16は故障続出の欠陥銃みたいに言われていたが、NHKがどう言おうとベトナムでのM-16の成功がそのあとの標準小銃の小口径化の流れを決定づけた。
小銃は5ミリ前後の小口径の方が運用上有利ではないかという議論はおそらく1940年代からあったが、ずっと30口径にこだわり続けたアメリカが結局.223口径のM-16でないとベトナム民兵に太刀打ちできなかった事実がこの議論に終止符を打った。
各国とも5.56ミリの小銃を試作し始めNATOも5.56ミリ小銃弾を新NATO弾として採用したが、かつての成功者だったベルギーのFNハーシュタル社はこの流れに乗り遅れた。
その理由は30口径のFAL/LARがあまりにも成功したからであり、その追加生産と保守に追われて新型小口径ライフルの開発が遅れた。
(上)FN社FAL実銃と(下)VFCのLARガスガン
かつては特にアフリカや南米の紛争地域の報道写真には
必ず写り込んでいるというぐらいに普及していた
さらに遅ればせながら開発したFN/CALはFALを5.56ミリにスケールダウンしたような構造で始まったが、これが問題を起こしたようで小口径ライフルの開発は停滞した。
FNのCAL
FALの構造を引き継ぎながらレシーバーをプレス製にするなど生産性にも考慮した…
のはいいがこれがテスト中に大きな事故を起こしたようでCALはFNの黒歴史のようになってしまった
結局はこのCALのロアレシーバーをプレスからアルミ合金削り出しに変更したのがFNC。
カラシニコフは鋼材削り出しのAK47からプレス製のAKMに変更したことで軽量化と生産性の向上を達成したが、これに習おうとしたのかFNはCALをプレスで開発したが、結局レシーバーをアルミ合金削り出しに変更したFNCでやっと製品化にこぎつけるという逆の道を辿った。
この出遅れが効いたのかFNCはベルギー軍の一部、マレーシアなどのいくつかの国の制式小銃にはなったものの世界を席巻するところまではいかなかった。
報道写真でよく見かけるというほどではないが、それでもたまに見かけるとこの銃はどういう仕組みになっているんだろう…と気にはなったいた。
VFCからFNCが出ると聞いてどうしようかと迷っていたが結局やっちゃいました
GHKのAUGとツーショット
この手の銃は中身はどうなってるんだろうとずっと謎だったが
こういう構造が忠実なトイガンが手に入るいい時代になりました
お金はどんどん飛んでいくが…
本体と一緒に手に入れたVFCのM4用マガジンV3グレーバージョン
赤いボルトストップリフターが付いているタイプでFNCと互換性あり
グレーというが本当にガッシュのホワイトとジェットブラックを1:1で混ぜたような
灰色をしていたのがさすがに変だったのでインディのパーカシールをスプレーした
上部のリップ部分がオリジナルの色
VFCのFN/FNCの情景写真
BFA、エンプティチェンバーフラッグ付き
FNCのフラッシュハイダーはFALとは全長が違うだけで
構造も外径、内径も同じものがついている
内側にBFA(ブランクファイアリングアダプター)を固定する
ネジも切られているのはちょっとわかりにくいかな
そこでFAL用に自作したBFAスタイルのマズルキャップをはめてみた
実銃のFNCのBFAもまんまこのスタイルだった
もうひとつそろえたのがエンプティチェンバーフラッグ
エジェクションポートから入れてチャンバーに刺しておくと
暴発は絶対しない状態ということが遠目にもわかる安全対策
こういうちょっとした小道具があるだけでグッと本物感が…
もちろんエアソフトガンの暴発防止も担保できるし
こんな安いアクセサリーで本物気分を味わえるのでおトク
(上)FN Herstal社のFNCコマーシャルタイプ実銃と(下)VFCのFNC
上の実銃は民間向けなので3点射とフルオートは省かれて
セーフティとセミオートだけになっている
(上)FN Herstal社のFNC実銃と(下)VFCのFNC
VFCはマガジンキャッチボタンが小判形の前期型がモデルになっているが
上の実銃は前期型だがトリガーガードが広げられたタイプになっている
こういう組み合わせもあるらしい
FNCの分解手順
グリップ上部のクロスボルトピンを右に抜く
VFCの通例だがはめ合わせはかなり固いのでプラハンマーとプラポンチで抜く
ピンは脱落防止のストッパーがあるので
その手応えがあるところまで抜くとレシーバーが上に開く
リコイルスプリングユニットはアッパーレシーバーに
はめ込んであるだけなので軽くボルトを引くと取り出せる
これを時計回り90度回転させるとボルトから抜き出せる
ストッパーがあるので無理に引き抜かないように注意
ボルトハンドルをダストカバーの後端に合わせるとハンドルが抜ける
ハンドルが抜ければボルトユニットも後ろに抜ける
簡単に書いているがはめ合わせはかなり固い
ハンドガードはフロントサイト根元のクリップを
前に押し出すようにして外すことで分解できる
ハンドガードを外すときはガスカットレバーも上に上げておく
(上)FNのFNC実銃の通常分解と(下)VFCのFNCの通常分解
部品の構成がほぼ実物通りというのがガスブローバックの醍醐味
リコイルスプリングユニットのバネ抜け防止割りピンは
3マガジンほど撃っただけでもうこんなに変形していた
強度が必要な部品ではないかもしれないが
こういうところに割りピンを使うのはちょっと疑問
ボルトキャリアとガスピストンのユニットはほぼ実銃通りの形状になっている
FNCはAK47と同じく発射ガスがシリンダーに吹き込んでこのピストンを直接押す仕組み
いわゆるロングストロークガスオペレーションの典型的な設計で
当時既に市場で成功していたAKをかなり意識している気がする
実銃でいうところボルトキャリアとボルトに当たるローディングノズル周辺
ボルトロテーティングカムがモールドとはいえ再現されており
ローディングノズル前端も左右にロッキングラグが大きく突き出す形状を再現している
FNCはM1ガーランドとかに近いデザインだったことがわかる
ダミーだがエキストラクターの彫刻表現もある
ボルト後端にはスチールのインサートも埋められていてカラ撃ちに備えている
後述するがVFCのFNCは弾切れになると最終弾の次が
カラ撃ちになる実銃のアクションも再現している
なのでカラ撃ちはする前提になっているようだ
ロアレシーバーのメカを一目見た時に思わず「SCARだ」と呟いた
メインスプリングが右にオフセットして薄いハンマーで
叩くデザインがそのままSCARに継承された
面白いのはVFC独自メカの最終弾検知アーム
セーフティポジションだとセーフティのシャフトが
直にシア兼トリガーをロックする確実なメカ
FNCはハンマーがコックされていなくてもセーフティポジションにできる
セミオートポジションだとシアは解放されてディスコネクターが
ハンマーラッチを捕まえるポジションに前進する
撃発後ハンマーはディスコネクターに止められて射撃は1発ずつのセミオートになる
フルオートになるとディスコネクターは後退してハンマーを捕まえない
フルオートシアがハンマーを止めるが戻ってくるボルトに蹴られて連続発射になる
3ポイントショットの時はカウンターのアームがハンマーに蹴られて2発目までは
フルオートと同じだが3発目にディスコネクターを前進させてハンマーを止める
3点射は弾薬を使いすぎる新兵のフールプルーフとして各国で研究された
実銃の3ポイントショットカウンター
ギア方式でディスコネクターを解放するシンプルなメカ
FNのFNC実銃にはボルトストップがないので
弾切れになると1発カラ撃ちになってワンマガジンが終わる
エアガンの場合はBB弾切れになってもガスがある限り撃ち続ける
VFCはM4マガジンのボルトストップリフターを利用して
最終弾を撃ったら1発カラ撃ちになって止まるメカを組み込んだ
レバーが持ち上げられるとバルブノッカーが上を向いてガスバルブを叩かない仕組み
マガジン側のボルトストップ解除のツメを切り替えれば
BB弾を込めずに撃ち続けるお座敷シューティングも可能
ちょっと気になる部分はここ
リコイルスプリングユニットのネジがここに激突して傷がついている
気にしなければいいという人もいるがバッファーが受けている衝撃が
全部ここにくるので放置しているとレシーバーの破損にもつながる気がする
やはり対策のためリコイルスプリングユニットのネジの頭を削った
以下VFCのこだわりのリアルさについて
サイトは250メートルと400メートルのL字ピープサイト
サイトの古臭さに1970年代の時代を感じる
面白いのはこのガスシリンダー
国内メーカーのガスブローバックはこういうガスオペレーションメカを
省略するのが通例だがVFCはかなり正確に再現している
ガスシリンダーの根元にはレバーがありこれを左右に切り替えるとガスの流量を調整できる
このガスシリンダーの前端には小さなガスベントホールがあり
(左)チューブのレバーを左に倒すとガスの一部がここから排出されるが
(右)右に倒すとこの穴が塞がれてガスはすべてピストンを下げる力に使われる
FNのマニュアルによると通常はレバーは左に倒しての射撃が推奨
内部にカーボンが溜まって動きが悪くなってきたら
レバーを右に動かして動作不良を改善できるとある
さらにフロントサイトに付いているガスカットレバーの構造も再現されている
(左)通常射撃の時はレバーを倒すと発射ガスがシリンダー内に吹き込むが
(右)ガスカットレバーを上に上げると通路が塞がれて発射ガスは完全にカットされる
この機能はライフルグレネードを発射する時に安全のためにボルトが後退しないようにするメカ
このレバーはグレネードを発射する時のサイトも兼ねている
FNCにつかうグレネードはこういうタイプのもの
銃口のフラッシュハイダーに刺して発射する
これも今では見かけなくなった骨董品
ボルトに固定されたピストンはガスシリンダーのほぼ全長まで伸びている
このガスオペ周りの再現はエアソフトガンの性能には全く貢献しない意味ない装飾なのだが
こういうところを省略せずに再現してくれるVFCに意気込みを感じる
ただ忠実に再現するあまりちょっと問題も
FNCのガスシリンダーはAK47と違って結構ぴったりの直径でクリアランスが少ない
そういうところも正確に再現されているがフロントサイト固定ネジが緩むとこれが問題を起こす
ボルトが途中で引っかかって完全閉鎖しなくなってしまった
原因はフロントサイトがグラグラしてガスシリンダーがねじれていたため
このネジを締め直すためまずフロントサイト前のイモネジを抜く
サイトポストも抜けるのでその奥のサイト固定用のイモネジを位置を合わせて締め直す
位置が決まったらサイト固定イモネジの緩みどめのサイト前のイモネジも締め直す
通常はここは緩まないが無理にバレルをねじったりぶつけたりするとズレる可能性はある
フロントサイトの位置が固定できたら念のためにボルトを
レシーバーに入れてみて抵抗なく動くかテストしておく
この時に抵抗感を感じるようならガスシリンダーのねじれが考えられる
組み立ての時の注意点もいくつか
ハンドガードも慣れないと組み込みが難しいがこのフロントの突起に
きちんとハンドガードを差し込めば難なく取り付けできるようになる
ボルトハンドルを差し込む時は段差のある方を下にする
この段差がレシーバーと噛み合うので上下間違えると動かないはずだ
各部のクリアランスがシビアなのでボルトは少しでも抵抗感があるなら何かが異常と考えた方がいい
FNCに付属しているのは右の黒塗装タイプで実銃写真もこんな感じの色合い
左は同じV3マガジンなんだけどグレーバージョンの色が
気に入らなかったのでパーカーシールでスプレー塗装した
実銃FNCはSTANAG成立以前からM-16とのマガジン共用化していた
ただしFNCにはボルトストップがないのでFNCのマガジンを
M-16/M4に刺してもホールドオープンしないのだとか
VFCは完全に共用可能
ストックは二本パイプなのかと思ったら強度があるのは下のパイプだけで上は樹脂製
これは実銃もそうで金属で作ると寒冷地で頬がストックに凍りついて大怪我の元なので
樹脂製にして下のパイプだけでストックの強度を確保する設計らしい
前期型のグリップはFALと同じラッパ型
後期型はストレートな形状に変わって中は
クリーニングキットを格納できるように変わった
レシーバーのあちこちには溶接の跡が再現されているのもリアル
レシーバーの上部にはスコープマウントを固定する突起が再現されている
これを見るとサイトマウントを作りたくなる…ということで次回
VFCから純正マウントがリリースされているが国内にまだ入ってこないし
あの今風のタクティカルな形状は70年代児のFNCには合わないので自作する
VFCのFNCは動作が快調なだけでなく細部をモデルガングレードで再現してくれた傑作
10万前後のお値段はなかなか厳しいが値段以上の価値はあると感じた
そしてFNの銃は…特にFNCはそういう再現に耐えるような
マニアックな構造があってとても楽しめるモデルだと思う
2024年5月28日
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