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Carrier Landingsで実機の飛行機の特性を体験してみた〜
アプリのことではなく実機について〜F14飛行特性について

Aviation Character

Carrier Landingsで実機の飛行機の特性を体験してみた〜
アプリのことではなく実機について〜F14飛行特性について

アプリの紹介ページで取り上げたCarrier Landingsで最近遊んでいる。

このアプリについて詳細はこちらを参照。
F18 Carrier Landing

Carrier Landings

このアプリは何度も紹介しているようにフリーウエア(App内課金あり)だが、飛行機大好きな私のような人から見たら実機の特性を実によく再現しているソフトだなと感心することしきりなので興味が尽きない。

アプリの出来についてはリンク先の紹介ページ参照。

ここでは実機について知っている2、3のことがらについて。
それとこのアプリの再現性、また再現されることからわかる実機の性格について。





フリーウエアで遊べるのはF/A-18だけだが課金購入すると各シチュエーション、機種の選択も広がる
今回全部購入してしまったので飛ばせるようになった飛行機について書く
先ずはF-14、恐らくは近代化改修された後のF-14Dあたりをモデルにした機体




射出カタパルトに載せられてフルフラップ、アフターバーナー全開状態、今まさに発艦しようとするF-14
いつものF18と比べるととにかくでかい
今のニミッツ級以降の大型原子力空母はこの機体のサイズを基準に設計されているという
確かに空母で運用できるサイズの限界でカタパルトに2機並べてセットできないサイズ




フルフラップに下げると翼の前縁全長のスリットも下がる
でかい機体に似合わず機体はふわりと浮き上がる感触があるのは
このVGウイング(可変後退翼)と長大なスリット、フラップのおかげ
実機ではフラップとしてエルロンも全部下げにしてローリングは翼上の
スポイラーでかけるという低速専用の操縦システムに切り替わる
この翼構造にしたために実機はとても複雑な操作系を持っている




そしてまさに射出されるF-14
射出されてから上げ舵を取っていたのでは間に合わないので射出の前にすでに
オールフライング(全翼可動)の水平尾翼はいっぱいいっぱいに上げ舵になっている
実機の射出風景もほぼ全部こんな感じだ




離艦直後の急上昇
F-14はアプリのデータによると全備重量は36tもある
こんなにデカイ重い機体なのにカタパルトを離れた直後の
操縦感はふわりと浮き上がる感触なのは上述の通り
VGウイングのおかげで意外に舵に対する反応は軽いしエンジンの総出力より
重量の方がデカイにもかかわらず垂直上昇での失速もなかなか起きない
それに何よりも気に入ったのは低速でも粘るような舵の感じが好きになった
実機もこうなのかどうかは知らないが操縦していて楽しい感触だ




最高速度チャレンジの様子
1301ノットは高度3万3千フィート換算でマッハ2.4
公称のデータ通りの性能諸元の表現に感心
ちなみにVGウイングの開閉はV/Hキーで前進・後退の二択を手動で操作する
ここは実機と違うところで実機は手動でも操作できるが
速度や機動に合わせて自動で開閉するそうだ




高度記録チャレンジ風景
最高到達点は8万8千フィート(29000メートル)、実用上昇限度は6万フィートというところ




VGウイングのおかげでF-14は他機にない特徴を持った
エンジンをアイドル状態にしてグライダーのように滑空しても
6万フィートから5〜60海里やそこらは飛べる
トップ◯ンとかいう映画にもそういうシーンがあったが
完全にガス欠になってエンジンが止まっても2〜30マイル以内まで
帰還できたら安全に空母まで帰ることができる
このことはパイロットにとっては大きな安心材料だ




F-14の最終アプローチの姿勢
実は間違えてVGウイングの展開を忘れていたのだがそれでも着艦には成功した
実機もこうなのかは不明だが機体の特性なのか私の腕がすごいのか(笑)




着艦体勢に入るF-14のフォロー画像
エンジンはかなり絞り込んでいる




このアプリの際立ってリアルな点は着陸進入の時にスロットルを絞って
舵を上に切ると実機と同じように高度を下げるという点だ
ちゃちなシミュレーターは機首を下げないと高度が下がらないが
着陸進入の時に機首を下げてアプローチするパイロットなんかいない
そんなことしたら前脚が折れてしまう
機首を上に上げて機体全体でブレーキをかけながら降りてくるのが正解だ




空母の甲板レベルから見ればはっきりと腹を見せながら降りてくるのがわかる
この時に前脚のオレオが伸びきって長くなっていればさらにリアルに見えると思う




F-14にメーカーのグラマン社が与えたニックネームはトムキャット(雄猫)だが
空母のクルーはこの機体を「グース(ガチョウ)」と呼ぶんだそうだ
それは空母に降りてくる時のこの姿に由来しているそうだ
脚間が離れて左右エンジンが離れていっぱいいっぱいに翼を左右に開いて
降りてくる姿がガチョウが足を開いて空から降りてくる姿に似ているかららしい




今度はちゃんとVGウイングを開いて最終アプローチ




今まさに着艦フックが拘束ワイヤーを掴む瞬間
飛行機の制動は通常どんなに短くても2〜300メートルは
必要だが空母の全長がそれぐらいしかない
着艦用にアングルドデッキ(斜めに取り付けられた滑走甲板)
があるがこの着艦スペースは50メートルほどしかない
ここに4本張られた拘束ワイヤーを掴み損ねたら海に落ちてしまうので
すぐに再離陸できるようにこの時点でスロットルは
フルになっているのが地上に着陸するのと全く違う点




着艦停止位置からフルスロットルで艦首カタパルトを使わずに離艦に成功した
このふわりと浮き上がる感がF-14の最大の特徴だと思う
カタパルトなしに甲板の半分より前から離艦するって第二次大戦当時のプロペラ機並みの性能だと思う
実機もこうなのかは知らないがこれに近い話は聞いたことがある




以前ナショジオの「巨大空母の内情をすべて見せます」という類の特番で
F-14のアプローチをパイロット目線でHUDデータ込みで撮影した画像を紹介していた
まさにこんな感じの画像だったが着艦進入の最終速度が160ノットだったことに驚かされた
F-18では160ノットのアプローチはかなり危険なのでやはりシミュレーターと実機は違うのかなと思っていた
しかしF-14だと150ノットまで落とせるし失速速度は140ノット後半あたりだと思う
この低速の粘り感がすごいしナショジオに写っていたあの画像の通りだと思った
プロペラ機並みの失速速度とマッハ2.4のダイナミックレンジの広さはとにかくすごい




アプローチの速度が遅いからアプローチはかなり高い位置からドスンと落とすように着艦する
だから甲板後端に到達した時の高さもこの通りかなり高い
FLOS(着艦コース光学ガイドライン)の指示よりもかなり高い角度から降りてくるようだ




ブリッジから見た最終アプローチの様子
この角度から見てもかなりピッチアップしているのがわかる




トライアルの後に再生動画を見ることができるはカーレースアプリなどと同じ
着陸の姿勢をこの動画で再確認できるのでどういう姿勢が安全か確認できる
空母の場合は失速速度ギリギリに速度を落として上から
落とすことでオーバーランのリスクを減らすのが正解




飛行甲板全体が見渡せるような高さから落とすのが理想
ファイ◯ルカウントダウンという映画ではF-14はゼロ戦
(その実体はT-6テキサン練習機)と「互角」に巴戦を繰り広げているが
この低速性能と舵の軽さなら確かにあんなこともできるかもしれないと思った




このアプリのグラフィックの精密さには毎度毎度感心させられる
とにかく全翼を展開した時に左右の幅がすごい
そのお陰なのかローリング軸に対しての安定性が抜群なのも特徴
そういう感触もよく表現されている




前回紹介した長距離航行は航続限界を超える場合空中給油が必要になる
また空母から遠距離攻撃任務の時も爆弾、弾薬を満載しているので
燃料タンクはむしろ空に近い状態で離艦して空中で給油を受ける
その空中給油でKC135から給油を受けている様子
速度が233ノットになっていることに注目
150ノットが失速点の超音速ジェット戦闘機にとって
230ノットで安定飛行を維持するのはかなり難しい




空中給油の様子を別アングルから




さらに12時方向からのアングルから




ウイングサイドから給油プローブを出して空中給油アプローチにはいる様子をとらえたところ
この空中給油のアプローチが半端でないほど難しい
相手も常に揺れているし自分も揺れているから
タイミングを合わせて近づかないといけない
イラついて速度を上げるとすぐに給油機を追い越してしまうのでじっくりと近づいていくしかない




空母の上に降りるのも最初は不可能に近いと思ったが空中給油アプローチはさらに難易度が高い
しかし長距離航行シミュレーションで地球を半周するような課題は空中給油をこなさないと実行不可能だ
今まで数回成功したがこれも着艦のように百発百中で成功するようにしないといけないらしい
実機のパイロットは大変だわ、こりゃ




給油が完了したらブレークしてVGウイングを閉じながら離脱




全部で10機種が使えるようになったがとりあえず一番感銘したF-14を取り上げた
この機体が一番気に入ったが実はもうすべてのF-14は退役してしまった
世界中でF-14が実戦で飛んでいるのはイラン空軍だけでそれも戦闘機ではなく
充実した攻撃管制システムを利用して簡易早期警戒機のような任務に就いているそうだ
そういう用途ならこの機動性も飛行特性も必要ないのだが
F-18よりも魅力的な飛行機なのにもったいない
維持費が世界一高い飛行機だから仕方がないのかもしれないが




VGウイング、速度による操縦システム切り替えなど自動制動、多標的同時攻撃能力などの
最先端の火器管制装置と最新の技術てんこ盛りの戦闘機だが
F-14の設計自体は1960年代で初飛行は1970年という実は非常に古い飛行機
1990年代に大幅に近代化改修を受けたが結局2000年代に全機退役してしまった
同世代のF-15が今でも世界の第一線だということを考えるとやはり維持費の高さが最大の問題なんだと思う
今の米海軍の異常なF-18偏重は多分その反動で羹に懲りて膾を吹いているのではと邪推してしまう



2016年10月17日
















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