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2024 年 11 月 16 日







With a Gun


勘違いかもしれないがお前の顔に見覚えがある
お前は彼の家から逃げていった男だろ
彼には借金があったはずなのにお前は別のものを返したな

銃を手に取っても
銃を手に取っても
お前はもとのお前以上の何者にもなれない
その手にしたもので他の者にも借りを返すのか?
雨に冷たい死骸を横たえて…

丘の上に病院を築き羽振りが良かったな
彼がお前の横領を突き止めるまでは…
彼はお前の手をはたき金を返せと迫った

銃を手に取っても
銃を手に取っても
お前はもとのお前以上の何者にもなれない
その手にしたもので他の者にも借りを返すのか?
雨に冷たい死骸を横たえて…

生まれつきの半グレのお前だから
そして西部劇の映画にかぶれたお前だから
お前を舐めるヤツには思い知らせてやろうと
薮に隠れて待ち伏せ人を殺す…
その手にしたルガーで

すぐにでも町を離れようとしているのは分かっているが
追い詰められても俺に電話をかけてくるな…
町に舞い戻ったらしっかり警告はするぞ

銃を手に取っても
銃を手に取っても
お前はもとのお前以上の何者にもなれない
その手にしたもので他の者にも借りを返すのか?
雨に冷たい死骸を横たえて…



2023 年 7 月 10 日







A Case Of You


別れる直前にあなたは言った
「ずっと君の北極星でいたい」
そしてこう続けた
「ずっと続く闇の中でどこにあると思う?
君が望むなら常に北を指している」

ボール紙のコースターの裏側に
テレビの青い明かりをたよりに
私はカナダの地図を描いた
ああ、カナダ
あなたと向かい合いながら
2枚描いた

聖餐のワインのようにあなたは私の血の中にある
ほろ苦くて微かに甘い
ケース一杯でも呑むことができる
いつもその地に立っているから
ずっとその地に立っているから

私は孤独な絵描き
孤独に絵の具箱の中に住む
悪魔に恐れをなし
恐れを知らない人たちに魅せられ
あなたが星の話をした時に言ったことを思い出す
「愛は魂に触れること
君は僕の魂に触れた
君の光が僕に降り注ぎ
その絆はずっと続く」

聖餐のワインのようにあなたは私の血の中にある
ほろ苦くて微かに甘い
ケース一杯でも呑むことができる
いつもその地に立っているから
ずっとその地に立っているから

あなたの口元に似た女性を見かけた
あなたの人生を知っていた
あなたの悪魔とその契約書も知っていた
彼女は言った
「彼に会い彼と共にいなさい
ただし血を流す覚悟をもって」

ああ、でも聖餐のワインのようにあなたは私の血の中にある
ほろ苦くて微かに甘い
ケース一杯でも呑むことができる
いつもその地に立っているから
ずっとその地に立っているから



2022 年 12 月 28 日







A Horse With No Name


旅が始まったころは たくさんの生き物を見つけた
草木や鳥や岩も生きている 砂も砂丘もその描く円も

最初に出会ったのは羽虫 雲ひとつない完璧な空
胸は高鳴り地面は乾いていたが 空気は音に満ち溢れてた

そう、砂漠を名前もない馬に乗って進む 雨が降れば快い
砂漠では名も忘れてしまう 苦しめられる相手もいないゆえ…
ラララ…

旅の2日目 砂漠の日照りで肌が赤くなってきた
旅の3日目 砂漠の楽しさが消え川底を見つめてた

そこに川が流れていると聞いていたが
すっかり干上がっていて心も乾いた

そう、砂漠を名前もない馬に乗って進む 雨が降れば快い
砂漠では名も忘れてしまう 名乗る相手もいないゆえ…
ラララ…

旅の9日目 馬を放した
砂漠が尽きて海に突き当たったから
草木や鳥や岩も砂も砂丘もその円もすべてそこにあった

海はその底に生命をたたえながら 表面は完全に砂漠のように装っている
都市はその底に心の地平を横たえながら
しかし人間はそこに愛を注がない…

そう、砂漠を名前もない馬に乗って進む 雨が降れば快い
砂漠では名も忘れてしまう 苦しめられる相手もいないゆえ…
ラララ…



2021 年 9 月 7 日







American Pie


ずうっと前の話
音楽がどれだけ楽しかったか覚えていた頃のこと
うまくいけばみんなも楽しく踊らせるような
ノリも知っていた時代だったかもしれない
でも2月の寒さに震えながら配達していた新聞の見出しが
玄関ポーチに置いたとき目に留まって足も止まった
彼の喪服の花嫁の記事を読んだとき泣いたかは覚えていない
でも心の奥底で何かが壊れた
「今日、音楽が死んだ」
だから

バイバイ、ミスアメリカンパイ
シボレー繰って拝謁の間に、だがそこは禁酒
お仲間はウイスキーとライでしこたま酔って
「今日はお前の命日」
「今日はお前の命日」
と歌う

愛の本を書いていたのか?
天にまします神への信仰は持っているの?
聖書に書いてある通りに?
ロックンロールを信仰している?
音楽がいずれは滅びる君の魂を救うの?
踊り方をゆっくり丁寧に教えてくれる?
君が彼の虜なのは知っているけど…
ダンシングジムで踊っている二人が
靴を蹴り捨てていたのを見ていたから…
僕はリズムアンドブルースをひたすら
追求していた暗い十代のオタクだった
ピンクカーネーションとピックアップトラックがお似合いの…
でもついてなかったな
そんな日に音楽が死んだ
だから僕は歌い始める

バイバイ、ミスアメリカンパイ
シボレー繰って拝謁の間に、だがそこは禁酒
お仲間はウイスキーとライでしこたま酔って
「今日はお前の命日」
「今日はお前の命日」
と歌う

そして10年が過ぎ僕らはそれぞれの道を歩み
流れる石も苔むすほど時が過ぎた
「でもすべては変わってしまいました」
道化が王と王妃の前でジェームスディーンから
パクったコートを着て歌い始めた時
僕も君も声を上げた時に
王が見下ろしたその隙に道化はイバラの冠を盗む
法廷は休廷となり評決はなされず
レーニンがマルクスの本を読みふけり
カルテットが公園でパート練習する間に
僕たちは葬式の歌を歌う
「その日、音楽が死んだ」
僕らは今も歌っている

バイバイ、ミスアメリカンパイ
シボレー繰って拝謁の間に、だがそこは禁酒
お仲間はウイスキーとライでしこたま酔って
「今日はお前の命日」
「今日はお前の命日」
と歌う

うだるような暑さの螺旋滑り台アトラクション
鳥たちは木陰から飛び立つ
8マイルも上昇してそこから急降下
芝の上で着地にしくじる
選手はロングゲインパスにチャレンジする
サイドラインギリギリにポジションを取った道化に向けて
そしてハーフタイムには甘い空気が満ち
軍楽隊のようなバンドが行進曲を演奏する間
僕たちはみんな踊っていた
選手たちがフィールドに戻り始めたが
楽隊はまだやめない
それで何がはっきりしたか思い出せるか?
その日に音楽が死んだんだよ
僕らは歌い続ける

バイバイ、ミスアメリカンパイ
シボレー繰って拝謁の間に、だがそこは禁酒
お仲間はウイスキーとライでしこたま酔って
「今日はお前の命日」
「今日はお前の命日」
と歌う

僕らはひとつところに集い居場所を失った世代
やり直すこともできぬまま
賢くすばしっこいジャック・フラッシュ
キャンディスティックの上に鎮座して
炎だけが悪魔の友だから
彼のステージを見つめながら
僕は怒りに拳を握り締める
地獄に生まれた天使にサタンの呪縛を解くことはできない
夜空に炎が舞い上がるように
生贄の儀式を灯りが浮き上がらせる
サタンは喜びに高笑いする
その日が音楽が死んだ日だった
彼は歌っていた

バイバイ、ミスアメリカンパイ
シボレー繰って拝謁の間に、だがそこは禁酒
お仲間はウイスキーとライでしこたま酔って
「今日はお前の命日」
「今日はお前の命日」
と歌う

ブルースを歌う娘を見た
なにかいいことはないか彼女に尋ねた
でも彼女は微笑んで踵を返し去ってしまった
かつての音楽を聴いた神聖な店に行った
しかし店員がここではもう音楽をかけていないと言った
子供が泣き叫ぶ通りでは恋人が泣き詩人は夢見がち
しかし誰も言葉を発しない
教会の鐘はことごとく割れてしまった
最も崇敬していた3人の魂
父と子と聖霊は沿岸部行きの
最終列車に乗って去ってしまった
この日が音楽が死んだ日だった
そして僕らは歌い続けた

バイバイ、ミスアメリカンパイ
シボレー繰って拝謁の間に、だがそこは禁酒
お仲間はウイスキーとライでしこたま酔って
「今日はお前の命日」
「今日はお前の命日」



2019 年 6 月 15 日







Sweet Sucker Dance


ドアを閉めかけた時
今夜初めて聞く悲しい音で満ち溢れた影すべてに
本当はこういうものだという警告されている気がして手を止めた
くそ、それってブルースじゃない!
それを聞いてあなたに従えなくなった
私ってバカだからまた恋に落ちてる
これはきっとダンスなのよ
そう気がついた

恋が顔つきを変える間だけ
ぴったりの歩幅で踊って
かまってほしがったり冷淡になったり
欲深くなったり親切になったり
少しの間離れて次は大きく抱き合って
まるでダンスじゃない!

私たちがステージに残った
時に離れて、時に寄り添って
時にお互い譲らない
二人とも頑固だから
時にはツイていたし、時には神の覚えも愛でたかった
そして時には偽った
これってただのダンスじゃない!

バカみたいに踊った
あなたと私、今夜は危なっかしい踊り方だった
ここからは私のソロよ
あなたがいなくなって
物影が放ち出す悲しげな音


それなしでは生きていけないもの
なぜ飛び出してそれを取り戻そうとしないの
ここでぐるぐる回って愛を疑ってるばかり
気がつくのを恐れているみたい
愛がどういうものかいうのは難しいけど
ああ、ダンスみたいなものよ
今夜は物影がすべて音で満ち溢れてる
生まれたばかりのようなお人好し
影が負け犬と警告する
私にあなたを盲愛するお人好しになれとでもいうの?

あなたは愛おしかった
あなたは誇り高かった
あなたは私の宝だった
時はしめやかに流れ
生きることは喜びだった
あなたが私の歩幅を決めていたのかもしれない
ちょうどダンスの時のように

バカみたいに踊った
あなたと私、今夜は危なっかしい踊り方だった
ここからは私のソロよ
憂鬱な影が囁くもっとも悲しい物語

私たちがステージに残った
時に離れて、時に寄り添って
時にお互い譲らない
二人とも頑固だから
時にはツイていたし、時には神の覚えも愛でたかった
そして時には偽った
これってただのダンスじゃない!



2018 年 2 月 10 日







Blue


紺碧、歌を作るのは刺青に似ている
以前海に行った時に
華やいだり心奪われたり、海に漕ぎ出したくなったり

紺碧、あなたのために作った歌がある
針の先のインク、肌の下に染み込む
何も無い場所を埋めていく

心沈むことはたくさんある
それでも波を乗り越えて
心に留めておかないといけないことがある

ヤクやアルコールやクソみたいなこと
不必要なこと、銃や葉っぱや
はしゃいで大笑いすること
はしゃいで大笑いすること
皆「地獄こそ進むべき道」という

私はそう思わない
でも私もチラと見やって調子を合わせてしまうかも
紺碧、愛している

紺碧、あなたに見せる貝殻のような上辺
その中でため息をついています
おぼろげな子守唄
これが私からのあなたのための歌



2017 年 10 月 15 日







Goodbye Porkpie Hat


チャーリーがレスター・ヤングについて話した
偉大な人が亡くなったと…
ポークパイハットを被った
最高のスウィングミュージシャン
暗黒の時代の輝く星
野外ステージに黒人を拒否する無数の口実
黒人のミュージシャンはいつも地下室のソーセージ
負け犬の立場だった

レスターが結婚した当時
白人と黒人は武器をふりかざし赤い血が流れた
ホテルのベッドから駆り出されて彼らの愛も安穏ではなかった
幸福(しあわせ)に生きるには希望が足りない
鮮やかで暖かい愛にたやすい道はない
狂気のニューヨークの夜にハグをする白人と黒人の私たち
街から追い出されるなんて思いもよらなかった
木から吊るされるなんて思いもよらなかった!

今夜人々は大声をあげて幸福だった
子供達は殺風景な街の通りで踊る
タクシーの警笛やゲームセンターの騒音の夏のセレナーデ
ふさわしい場所もふさわしくない場所も
ネオンの下にすべての思いはまだ続いている
私とあなたにとって歩道は歴史の書
サーカスの危なっかしい道化が
危険なバランスで舗装したような道
何世代も毎日毎日書き留められた…

地下鉄から街に繰り出す
深夜が奏でる音楽に乗って
チャーリーのベースにレスターのサキソフォン
タクシーの警笛とブレーキの音を伴奏に
そして今チャーリーは治療師たちとメキシコにいる
ここからの道は音楽に続いている
二人の漆黒のバーの外で踊るダンサー
ポークパイハットバーと呼ばれるバー
そして黒人の子達がそこで踊っている
今夜も!



2017 年 10 月 14 日







God must be a boogie man


3歳の時
彼はすでに揺るぎない信念を持っていた
見たものを他のふたりに見せられるのを待っていた
他の二人は恐れから彼を謗った
愛し信じようと試み続ける人
そして煮え湯を呑まされることになる
計画によれば、そう!
神の計画によれば
神様はブギーマンに違いないわ

とても優しい人
過剰な甘い愛で皆を心の神聖な神殿に誘う
盲目的な信仰のお節介
盲目的な怒りの疼き
なぜ彼らの安直な生き様、安直な興奮について
彼らが言いたてるにまかせたのか…
計画によれば、そう!
神の計画によれば
神様はブギーマンに違いないわ

ミンガスが1歳か2歳か3歳の時見た世界
彼が見たかった世界がどんなだかわかる?
そう、世の評価なんか大して役にも立たない
人が真剣に自分自身についてどう感じるか
発見しようとしている時には…
計画によれば、そう!
神の計画によれば
神様はブギーマンに違いないわ



2017 年 9 月 23 日







Talk to Me


月明かりと街灯があったの
どれくらい呑んだかおぼえていないけど
駐車場一杯分くらいのテキーラアナコンダでベロンベロン!
とりとめもなく、あけすけに、自由にしゃべった
気ままにしゃべれるならいくらでも払う
あなたが謎めいた沈黙にいくらでも払うように

さあ、私に話して!
話してください
話して、話して!
ミスター謎の沈黙さん!

マーサ・スチュワートについて話せるよ
園芸についても話せるよ
ゴシップは嫌だけど彼らの名誉をかけた秘密についてなら乗る
それか権力について話そう
イエスやヒトラーやハワード・ヒューズについても
チャーリー・チャップリンの映画のこととか
イングリッド・バーグマンの北欧人の憂鬱とか
ねえ、話して
古い話題でもなんでもいいから
いいから話して!
ミスター謎の沈黙さん!

バカみたいな話でも私は聞いているし
賢ぶって話してもいいよ
全部私の心の本に一行ずつ記憶されて
写真や絵画のように刻まれていくよ
そしたら私のケロイドだらけの足でも
うきうき踊りだすから
ドラマ「スリングアンドアロー〜非道の恋」から
「Willy the Shake」の歌詞から文句をパクった
「借り手にも貸し手にもなるな」ってね
ああ、ロミオ、ロミオ、私に話して!

沈黙は金とか思ってる?
それで満足?
それで心の監獄から自由になれる?
それともリボンでもかけられているの?
あなた特別なの?それとも言葉をケチってるだけ?
言葉を為替トレーダーのように扱うよね
なら私にもいくらか賭けてみてよ
私を黙らせて、喋ってみて!
私はずっと喋っているよ!
こけっこっこーーー!
さあ話して!



2016 年 11 月 5 日







The Wolf That Lives In Lindsey


人の心の闇について何がわかる?
歴史書にも記されていないし
今日のニュースショウでも語られない
彼は修羅の道を選んだ…

ブリザードが吹雪いては止む
激しい憎しみで刺し通すように
バックショット弾のような大粒の雪が
降っては止み、降っては止み…

彼の祖父は事業に心を奪われ
姉は盗人と恋に落ちた
リンジーは背信の闇の道を愛した
寒そうな薄いブラウスの娘たち

ブリザードが吹雪いては止む
激しい憎しみで刺し通すように
バックショット弾のような大粒の雪が
降っては止み、降っては止み…

お巡りは気にも留めない
夜の女が倒れていても
些細な光景なので視界にも入らない
もし利口で金持ちでツイていたら
人の法の網もかいくぐれるかもしれない
しかし心の中の魂の法と自然界の法は
誰も打ち破ることができない
誰も、誰も…

リンジーの中には狼が棲んでいる
それが人を襲っては逃走する
ハリウッドの丘やダウンタウンのスラムを抜けて
彼は修羅の道に踏み込んだ…

ブリザードが吹雪いては止む
激しい憎しみで刺し通すように
バックショット弾のような大粒の雪が
降っては止み、降っては止み…
降っては止み、降っては止み…


2016 年 7 月 5 日







River


もうすぐクリスマスが来る
皆木を切ってトナカイに牽かせている
喜びと平和の歌を歌いながら
私はスケートでどこまでも行ける河があればいいのにと願っていた

雪は降っていない
緑の森はたくさん残っている
たくさんお金を手に入れて
この嫌な暮らしから抜け出したい
私はスケートでどこまでも行ける河があればいいのにと願っていた

河があればいいのにとずっと思っていた
イメージを膨らませて
スケートでどこまでも行ける河があればいいのにと願って
彼を泣かせた

彼は私を守ってくれた
彼は心を落ち着かせてくれた
彼はいたずらっぽく私を愛してくれた
膝を痛めているに
私はスケートでどこまでも行ける河があればいいのにと願っていた

利己的で悲観的な自分を扱いかねていた
今遠く離れて彼を失って彼こそその人だと思った
私はスケートでもどって行ける河があればいいのにと願っている

河があればいいのにとずっと思っていた
イメージを膨らませて
スケートでどこまでも行ける河があればいいのにと願って
彼にさようならを言わせた

もうすぐクリスマスが来る
皆木を切ってトナカイに牽かせている
喜びと平和の歌を歌いながら
私はスケートでどこまでも行ける河があればいいのにと願っていた





All along the watchtower


ここからの抜け道はあるはずだ…
道化は盗人に言った
混乱しすぎて不安でいっぱいだとも
金持ちたちはおれのワインを飲んでいる
農夫はおれの畑を掘る
誰もおれの言葉に耳を傾けない
誰もおれのいうことがわからないから

怒る理由はない
盗人は優しく言い返した
人生はただの戯言としか感じない人は大勢いる
が、しかしおれとおまえはこれが俺たちの運命じゃないことに気がついている
だからもう嘘を言うのはやめよう
そんな時間はないからだ

見張り台からずっと
王子は見守り続けていた
女たちが行っては帰るのを…
裸足の奴隷たちも…
冷酷な塀の外で山猫は唸り
二人の騎馬兵は行き違い
旋風は吠え始める

見張り台からずっと
見張り台からずっと


2015 年 11 月 29 日







Edith And The Kingpin


大男がやってきた
ディスコダンサーが出迎えた
私服の警官も出迎えた
小さな街に大きな男、ケバいリップの女

壊れたタイプライターが奏でる
新米スイングプレイヤーみたいなリズム
タイプライターみたいなバンドの演奏を
大男は聴いてはいなかった
彼の目はエディスに釘づけだった
彼の左手はその手の中の欲望をしっかりと抱いていた

輪の中のエディス
修士号を取りそこなった娘
ダイヤの指輪をつけた男がすり寄ってきている
ダイヤの縦爪は曲がっている

彼らが一つずつもたらす
彼の彼女に対する背教のエピソード
彼らが目撃した彼の罪、彼の栄誉
彼が連れ去った女はすぐに大人になり老いた
彼は彼らの顔が映ったスプーンをげんなりしながら傾けた

ベッドの中のエディス
雨の中を飛び抜ける飛行機の音
壁の中の電線の音
歌聲のように…謎に満ちた歌聲のように
心の中のバーで雪メクラになった男が慌てて叩く、
雪メクラの男、ロマンティックな…
彼の罪はエディスと黒幕の彼二人の罪だと言った
身につけた飾りを揺らしながら
お互い目を見つめあった
二人は互いに目をそらす勇気がなかった
そう、二人は互いに目をそらす勇気がなかった





Get It Up For Love


これは微妙な状況だ
どういう結末が待っているか誰にもわからない
この謎を解けば、あるいは愛を捨て去れば自らの魂を救えるかもしれないし

さあ君!
さあ、愛へ急げ急げ急げ! 
さあ、愛へ急げ急げ急げ! 

人々には願望がある
この痛みがいつ終わるかは誰も知らない 
恐怖に逃げこむのもいい
とどまって戦うのもいい
立ち止まって「これは正義じゃない!」と叫ぶこともできる

さあ君!
さあ、愛へ急げ急げ急げ! 
さあ、愛へ急げ急げ急げ! 
 
微笑みで購える流れ星は
路傍で打ち砕かれ
心に秘めていたものは稀にでも露わになるだろうか
 
これは難しい状況だ
この苦闘はどこで終わるかは天のみが知る
もし永遠に続くのなら
まだ時間はあるはずだ
運命が回り始めても僕は君を見捨てない



2015 年 11 月 28 日







Kid Charlemagne


音楽が鳴りろうそく灯りが照らす仕事場で働く
サンフランシスコの夜、君はこの街のNo.1だった
愛車で交差点を駆け抜ける君がここから見える世界を全く別物に変えた
キリストにでもなった気分だったろう?
知っていたか?
皆の目には君は英雄として映っていたんだよ

丘のコースで皆はケロシンでチャージしたホットロードで競っていたが
君のマシンはキッチンクリーナのホットロードだった
皆、君のガレージの天然色の光景に釘づけになった
Aフレーム住宅の壁にはどこも番号が打ってあった
その全部が君のゲットしたゴールラインの目印になったら
LAにだってあえて行けただろう
一人でだって行けただろう
永遠にだって生きられただろう
世界がすべて分かたれて消えていく日を迎えるまで

進め!キッド・シャルマーニュ
進め!キッド・シャルマーニュ

今ではお客も減り赤字も増え
気安く金を貸してくれる友人もみんな亡くなってしまった
思えばおかしな人生だった
白昼に顏を塗りたくった妙な奴らも一丁前の人になったが
変わらないものがある

君は思い違いをしていたんだよ
君は時代遅れなんだよ
通りを歩く人々を見てみろよ

進め!キッド・シャルマーニュ
進め!キッド・シャルマーニュ

メスを綺麗に磨き上げて
他のシリンダーやゲージなどムショに持ち込めないものと
一緒にすっかり片付けよう
車にガソリンは入っているか?
おお、ガスは満タンだぜ!
ここに集まった全員が君は何者か知っている

気をつけてやれ!
奴らはずる賢いし
奴らにとっては今でも君は無法者なんだ

進め!キッド・シャルマーニュ
進め!キッド・シャルマーニュ




2015 年 11 月 25 日







Hissing of the Summer Lawn


ダイヤを買って彼女の喉元に当てて丘のランチハウスに連れて行った
彼女は谷にバーベキューセットが打ち捨てられているのを見た
青いプールを眩しい光に透かして見た
夏草のざわめきを聞きながら…

トゲのある針金の柵を張ってよそ者が入らないようにした
そのトゲにはどれにも彼の血がわずかににじんでいた
彼女はその柵をティンバレスの打ち捨てられたところまで見回った
夏草のざわめきを聞きながら…

闇がすべてを簡単にする
闇がすべてを覆い隠す
灯りが消え、闇が、闇が、闇が…
色も明暗もなくす

ダイヤの犬はカップと杖を持ち
眼鏡越しに目一杯のプライドと恥じらいを見せた
黒い虫が飛んで
猛暑の風が犬のご主人様の声を運んでくる
夏草のざわめきをともなって

彼女に嘆きの闇を与えた
いつも静まっている理由がそれだった。
部屋をチッペンデール調家具で埋め尽くした
誰も座らないのに
彼女はまだ愛を信じていた
それが女の選択だから
夏草のざわめきを聞きながら…





Shades Of Scarlett Couquring


カトリックの聖人の光のように
スカーレットは現れて
深い悲しみを感傷的な映画で演じて見せた
セルロイドのカウボーイが街に来て
映画の恋人たちは揺らめく
大農場と大胆なダンスドレス…
息を潜めた

風もないのにクリノリンペチコートは揺れ
ゲーブルとフリンの幽霊を追いはらう
エキストラの間からマグノリアスのアーバンの髪
南部のチャームスクール出の彼女は
彼女なりの仕草がある
世界中の男がすべてを投げ打って彼女を抱きたいと思うだろう

友人は彼女に偉ぶらないでという
隣の人は小声で怒りながら寝ようとしていた
恋人は「氷の塊」と怒った
心地よい気分になるのは到底無理だった
辛いこと嫌なことを感じて
それが夜には暗い夢になる
未成年閲覧禁止のシーンの間
目を覆っていた

勇敢になるのは無理だから
美と狂気が賞賛され
必要だから歩き回る
強欲の重荷を背負いながら…
くすねたドレスを身にまとい
鋼のような強さと脆さを演じる
血のようなネイルのたおやかな指と腕で

火は消えてもまだくすぶっている
彼女は「女はなんでも取っておくものなのよ」と言った
スカーレットを真似て勝ち誇って
彼女は「女はなんでも取っておくものなのよ」と言った





I.G.Y


星条旗のもと確として我ら確信せり
夢想は現実となり汝らもこれを受け入れるべし
未来は明るきものなるはもはや確実となれり

グラファイト輝く列車は海の下を走り
紐育・巴里間を90分で結ぶ
1976年にはすべてが実現しているであろう

などか素晴らしき世界ならざらん!
などか栄光の時とならざらん!

宇宙(そら)への切符を手にせよ
今のチャンスのうちに…
狙いは定まれり
汝その旅の目撃者となるべし
もはや勝利は確実なり

都市に人々は遊び
人工の太陽は輝き
天候は完璧に制御され
スパンデックスの上衣はすべての民に支給される

などか素晴らしき世界ならざらん!
などか栄光の時とならざらん!

グラファイト輝く列車は海の下を走り
紐育・巴里間を90分で結ぶ
1976年にはすべてが実現しているであろう
(いずこも娯楽はすべて完備せり)

良識ある人々がプログラムせし機械が重要なる意思決定をし
我らはすべての労働から解放される
我らはすべて自由となり永遠の若さを享受する

などか素晴らしき世界ならざらん!
などか栄光の時とならざらん!




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